SBTとは?取り組むメリットや日本の認定企業を紹介

2022/12/7

地球温暖化などの環境問題に意識が高まっている現代社会において、問題解決に向けてさまざまな取り組みが行われています。

中でも、カーボンニュートラルを目指す取り組みを代表とする温室効果ガス(GHG)削減は、世界的な課題とされています。

このような背景から日本でも、温室効果ガス削減への取り組みに参加しようと考えている企業が増加していますが、具体的にどのような目標を設定するべきなのでしょうか。

そこで本記事では、温室効果ガス削減目標の指標の1つである「SBT」について詳しく解説します。

SBTについて基本的な説明から取り組むメリット、設定方法まで事例を交えて紹介するので、SBT認定を目指している企業の方はぜひご活用ください。

監修者

新島 啓司 / 環境コンサルタント

東京工業大学大学院 総合理工学研究科を修了後、約30年間、環境、再生可能エネルギー、ODAコンサルタント会社に勤務。在職中は自治体の環境施策、環境アセスメント、途上国援助業務の環境分野担当、風力や太陽光発電プロジェクトなど幅広い業務に従事。技術士環境部門(環境保全計画)、建設部門(建設環境)の資格を持つ。また、英語能力(TOEIC満点)を生かし、現在は英語講師としても活躍中。

SBTとは?

SBTとは「Science Based Targets」の略称であり、温室効果ガス削減に向け、各企業が設定する5〜15年後の温室効果ガス排出削減目標のこと。

2015年に採択されたパリ協定では「産業革命前と比較した世界の気温上昇を2℃より十分低く保ち、1.5℃未満に抑制する」という2℃目標(1.5℃目標)が示されました。

パリ協定を背景に、「CDP」「国連グローバルコンパクト(UNGC)」「世界資源研究所(WRI)」「世界自然保護基金(WWF)」の4つの組織によってSBTはつくられました。これらの4組織は「SBTイニシアティブ(SBTi)」と呼ばれ、現在も連携してSBTの運営にあたっています。

組織 概要
CDP
  • 企業の気候変動、⽔、森林に関する世界最⼤の情報開⽰プログラムを運営する英国で設⽴された国際NGO。
  • 世界13,000社の環境データを有するCDPデータは590強の機関投資家のESG投資における基礎データとしての地位を確⽴(2022年3⽉時点)。
国連グローバルコンパクト(UNGC)
  • 参加企業・団体に「⼈権」「労働」「環境」「腐敗防⽌」の4分野で、本質的な価値観を容認し、⽀持し、実⾏に移すことを求めているイニシアティブ。
  • 1999年に当時の国連事務総⻑が提唱し、現事務総⻑のアントニオ・グテーレスも⽀持。現在1万9000以上の企業・団体が加盟(⽇本は468の企業・団体が加盟(2022年3⽉時点))。
世界資源研究所(WRI)
  • 気候、エネルギー、⾷料、森林、⽔等の⾃然資源の持続可能性について調査・研究を⾏う国際的なシンクタンク。
  • 「GHGプロトコル」の共催団体の⼀つとして、国際的なGHG排出量算定基準の作成などにも取組む。
世界⾃然保護基⾦(WWF)
  • ⽣物多様性の保全、再⽣可能な資源利⽤、環境汚染と浪費的な消費の削減を使命とし、世界約100カ国以上で活動する環境保全団体。

出典:環境省「SBT(Science Based Targets)について」https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SBT_syousai_all_20221201.pdf

SBTへの取り組み状況

世界基準での温室効果ガス削減目標を達成するために、どのくらいの企業がSBTへ取り組んでいるのでしょうか?

世界と日本の取り組み状況をそれぞれ見ていきましょう。

世界のSBT取り組み状況

世界中のさまざまな企業がSBTに参加しており、2022年10月現在、79カ国から3,776社の企業がSBTへの取り組みを行っています。

SBTへの取り組みを行っている企業は、世界基準の削減目標をクリアしていると認定された「SBT認定取得済企業」と、「SBT認定コミット中企業」に分けられます。

コミット中とは、2年以内のSBT設定を表明しているという意味で、認定を目指して取り組んでいる企業のことです。

環境省が発行している「SBTに参加している国別企業数」によると、2022年10月現在でSBT認定を取得している企業は、イギリスが1番多く293社、2番目に277社の日本が続きます。

世界的にみた業種別のSBT認定取得済企業では「食料品関係」が多いです。コミット中の企業で見てみると、「金融・保険・食料品」関係の企業が多いという特徴があります。

出典:環境省資料「SBTに参加している国別企業数」https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SBT_joukyou.pdf

日本のSBT認定取得企業

全世界のSBT認定取得済企業1,803社のうち、日本企業は277社です(2022年10月現在)。
認定済企業が多い業種は世界だと食料品関係ですが、日本においては電気機器、建設業が多い傾向にあります。


<業界別主なSBT認定取得企業>

業種 企業名
建設業 清水建設、住友林業
食料品 アサヒグループホールディングス、味の素
化学 花王、資生堂
金属製品 YKK AP
機械 小松製作所、日立建機
電気機器 ソニー、京セラ
空運業 国際航業
情報・通信業 SCSK、NTTドコモ
小売業 アスクル、ファミリーマート
印刷 大日本印刷、凸版印刷
不動産業 東急不動産ホールディングス、三菱地所
サービス業 セコム、電通

SBT認定に取り組んでいる日本企業

SBT認定にコミットしている世界の企業1,973社のうち、日本企業は61社です。
世界で取り組み中の企業が多い業種は金融・保険・食料品ですが、日本の場合、電気機器が多い傾向にあります。


<2年以内にSBT認定を目指している主な企業>

業種 企業名
建設業 大林組、西松建設
食料品 カゴメ、キッコーマン
化学 小林製薬、ロックペイント
金属製品 文化シャッター
機械 スミダコーポレーション
電気機器 アドバンテスト、エスペック
空運業 ANAホールディングス
情報・通信業 メルカリ、ヤフー
小売業 セブン&アイ・ホールディングス
金融・保険業 東京海上ホールディングス
不動産業 ヒューリック
サービス業 H.U.グループホールディングス

企業がSBTに取り組む3つのメリット

温室効果ガス排出削減が世界的な課題として重要視されている現在、多くの企業からSBTへの取り組みが注目されています。

その理由は、単純な地球温暖化への対策だけでなくSBTに取り組むことで企業が受けられるメリットも多く存在するからです。

前提として、SBT認定を受ければパリ協定に基づく世界的な基準を満たす企業であることがアピールできます。その点だけでも大きなメリットですが、取り組みを通して企業が得られるその他3つのメリットを紹介しましょう。

メリット1:多くの投資家から良い評価を得られる

SBT認定を受けていると、国際基準を満たす取り組みを行っている優良な企業として他社や投資家からの評価が上がります。

それにより、投資先の候補として選ばれる可能性が高くなるのです。

SBT認定は、環境非営利団体(NGO)である「CDP」の評価にも繋がります。CDPとは、企業が行っている環境問題への取り組みに関する情報開示を促すプロジェクトです。

開示された情報から、どこまで環境問題に対して取り組んでいるかを採点し、投資家が投資先を選ぶ基準としても活用される「CDPスコア」がつけられます。

CDPに参加する投資家が増えている現在、CDPスコアを高めることが多くの投資家へのアピールになると言えるでしょう。

2022年1月現在、CDPに署名している投資家の機関数と運用資産額は以下の通りです。

署名機関数 680以上
運用資産総額 $130兆(日本円で約1京7890兆円)

自社が行っている取り組みを投資家に評価してもらうためにも、大きな影響力を持つCDPを意識した目標設定が重要と言えるでしょう。

>>CDPについて詳しくはこちら

メリット2:自社の生産性向上・コスト削減につながる

SBTが課す削減目標を満たすための取り組みは企業によってさまざまですが、代表的なものとして省エネや再エネの導入などが挙げられます。

自社で使うエネルギーを効率化することで、脱炭素への取り組みを行うとともに電気代や燃料代などのコストカットにつながります。

さらに、SBTという意欲的な削減目標が掲げられることによって、業務効率化やイノベーションの促進などの生産性向上へのきっかけになる場合もあります。

逆に言えば、生産性向上に向けた取り組みの1つとしてSBTを活用することで、成果指標としての効果も期待できるのです。

メリット3:顧客企業からの信頼を得やすくなる

SBTはサプライチェーン全体の温室効果ガス排出削減を求めています。そのため、SBTの認定企業・コミット企業は、サプライチェーン企業に対しても脱炭素化を促すケースが多くなります。

サプライチェーン企業にとっては、脱炭素化に取り組むことで顧客企業からの信頼が高まり、発注をもらいやすくなることなどが期待できます。
実際に、SBTに取り組んだ企業へのアンケートでは、55%の企業が「競争上の優位を得られた」と回答していますScience Based Targetsホームページより)
顧客企業の要望に対応し、自社もSBT認証を受けたりコミットしたりすることは、事業機会の獲得につながると言えます。

SBTの認定手順

「これほどメリットがあるなら自社でもSBT認定を受けたい」という企業のために、SBTの申請手順や認定取得の基準などを紹介するので、参考にしてみてください。

SBT申請の流れや手順

SBT申請までの流れは、全部で6つのSTEPを踏む必要があります。

  1. 任意で、2年以内にSBTを設定するという宣言である「Commitment Letter」を事務局に提出する。
    出典:環境省「SBT(Science Based Targets)について」https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SBT_syousai_all_20221201.pdf

     

  2. 目標を設定し、「目標認定申請書(Target Submission Form)」を事務局に提出する。
    申請書の記載事項は下記の12点です。
    出典:環境省「SBT(Science Based Targets)について」https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SBT_syousai_all_20221201.pd

    記載事項に含まれている「Scope」とは、サプライチェーン温室効果ガス排出量の中で分類されている事業ごとの排出量となります。

    3つの分類はそれぞれ以下の通りです。

    Scope1 自社の燃料の使用に伴う排出(直接排出)
    Scope2 他社で生産された電力等のエネルギー使用に伴う排出(間接排出)
    Scope3 その他の間接排出

    サプライチェーン温室効果ガス排出量とは、原料調達から製造、物流、販売、廃棄に至る企業の事業活動全体における排出量のことで、Scope1〜3の合計が総排出量となります。


    ※申請には、USD4,950(外税)(日本円にして約630,000円)の費⽤が必要(再提出の場合1回につきUSD2,490)。
  3. SBT事務局が提出された目標の妥当性を確認・審査し、メールで回答される。
    確認の項目は下記の通り。
    項目 内容
    評価対象企業
    • ⼀次審査(申請書の記載事項に問題が無いか確認するもの)を通過した企業
    • 発展途上国に本社が所在する企業は申請費⽤が免除される
    評価対象⽬標
    • ⽬標を全てのSBT基準に照らして評価
    ⽬標認定申請書
    • ⽬標全体の妥当性確認や再提出を望むのであれば、申請書は全て記⼊しなければならない
    レビュー実施者
    • ⽬標妥当性確認チーム(必要に応じてテクニカルワーキンググループやリーダーシップチームも参加)
    提供される
    フィードバック⽔準
    • 詳細なフィードバックが以下の形式で、評価の段階ごとに提供される
      • 申請内容が基準に合致していなかった場合に、⾮適合箇所に対処するための推奨事項を含む包括的な⽬標妥当性確認レポート
      • 公式決定⽂書
      • リクエストに応じて、SBTiのテクニカルエキスパートとの60分間までのフィードバック
    回答期間
    • 公式決定⽂書と⽬標妥当性確認レポートは、妥当性確認サービスが開始してから30営業⽇以内に発⾏される
    決定の有効性
    • 旧バージョンのツール/⼿法を⽤いてモデル化され、認定された⽬標は、最新のツール/⼿法の発効後、6か⽉のみ有効。
    • 当該期間が過ぎると、⽬標は新しいツール/⼿法を⽤いて再計算されなければならない
    連絡
    • 企業には認定の⽇(SBT事務局からの資料送付時)から1か⽉以内に、SBTiウェブサイトでの公表⽇が割り当てられる。これは認定承認のメールで通知される。
    • 企業がこの⽇付に合意しない場合、企業は認定された⽬標を6カ⽉以内に公開しなければならない。

    出典:環境省「SBT(Science Based Targets)について」https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SBT_syousai_all_20221201.pdf
    ※表内の「SBTi」は運営主体のSBTイニシアティブを指す。
  4. 認定された場合、SBT等のウェブサイトにて公表される。
  5. 排出量と対策の進捗状況を年1回報告し、開示する。
  6. 定期的な目標の再評価をするとともに、必要に応じて目標を再設定する。(最低でも5年に1回は目標の再評価が必要)

また、2020年には中小企業向けの新たな申請ルートである「Target Setting Letter for SMEs」が導入され、より簡単に申請できるようになりました。

申請費用が、USD1,000(日本円にして約130,000円)と1/5程度に抑えられたのも、取り組みを検討している中小企業には嬉しいポイントです。

認定までの流れは次の7ステップとなります。

    1. ターゲット検証申請フォーム」に会社情報やターゲットオプション、排出量プロファイルなど必要な情報を記入する
    2. 記入した申請フォームを送信する
    3. 申請内容を元に申請企業の経営状況や財務状況などの調査が行われる(通常7〜10営業日)
      なお、不明事項に関して追加で質問されるケースもあり、タイムリーな回答が要求される
    4. 審査が通れば、利用規約が明記された認定の通知メールが届く
    5. 利用規約に署名し、PDF形式で「smes@sciencebasedtargets.org」に返送する
    6. 署名が確認されたのち、申請費用の請求書が送付されるので内容を確認し、支払いを行う
    7. 支払い確認と最終確認が送信され「SBTi Webサイト」などにて公表される

参考:「Resources - Science Based Targets」https://sciencebasedtargets.org/resources/?p=resources

SBT認定基準

SBTに認定されるには、自社だけでなくサプライチェーン温室効果ガス排出量(事業活動全体における排出量)の削減が求められるため、下記3つの考え方が重要となります。

  1. Scope1,2,3について目標設定をしなければならない
  2. Scope1,2の削減経路は「総量同量」を削減しなければならない
  3. Scope3の目標は「野心的な目標」を設定しなければならない

上記の考え方を元に、各社目標値の設定を行います。
詳しい基準概要は、下記をご確認ください。

  SBTの基準概要
対象 特になし
目標年 公式申請年から、5年以上先、15年以内の任意年
基準年 最新のデータが得られる年での設定を推奨
削減対象範囲 Scope1,2,3排出量。但し、Scope3がScope1~3の合計の40%を超えない場合には、Scope3目標設定の必要は無し
目標レベル 下記水準を超える削減目標を任意に設定
■Well below 2℃(必須)
 少なくとも年2.5%削減
■1.5℃(推奨)
 少なくとも年4.2%削減
費用 目標妥当性確認サービスはUSD4,950(外税) (最大2回の目標評価を受けられる)
以降の目標再提出は、1回USD2,490(外税)
承認までのプロセス 目標提出後、事務局による審査(最大30営業日)が行われる
事務局からの質問が送られる場合もある

このような基準に当てはめながら、先程説明した設定方法で目標を決めていきましょう。

中小企業のSBT取り組み事例

日本の中小企業におけるSBTの取り組み事例を紹介します。

業種によって目標の設定値や取り組む内容が異なるので、企業が取り組んでいる具体的な内容を参考にし、自社に取り入れてみてください。

八州建設株式会社

八州建設株式会社は、建設工事で使用する車両や材料にアプローチし、温室効果ガスの削減や再エネ100%を目指しています。

目標 取り組み内容
  • 2030年までに温室効果ガスを2018年比50%削減
  • 2030年までに再エネ50%達成、2040年までに100%を達成
  • 営業車両や工事車両の電動化
  • 自社で使う電力の再エネ化
  • 原材料・消耗品の購入時にリサイクル製品を優先的に購入

参考:環境省|中小企業版SBT・RE100取組事例|八州建設株式会社

セッツ株式会社

セッツ株式会社は、設備の更新や、太陽光パネルの設置による再生可能エネルギーの利用により、温室効果ガスの削減や再エネ100%を目指しています。

目標 取り組み内容
  • 2030年までに温室効果ガスを2019年比27.5%削減
  • 2050年までに再エネ100%を達成
  • 既存設備の更新、導入に伴うエネルギー使用の効率化
  • 太陽光パネル設置

参考:環境省|中小企業版SBT・RE100取組事例|セッツ株式会社

株式会社篠原化学

株式会社篠原化学は、ショールームや倉庫の電力の再エネ化を推進するほか、素材や包装を環境負荷の低いものにすることで温室効果ガスの削減を目指しています。

目標 取り組み内容
  • 2030年に温室効果ガスを2018年比50.4%削減
  • 2030年までに再エネ100%達成
  • 本社、ショールーム、倉庫の電力の再エネ化
  • CO2排出の少ない素材への移行
  • 容器包装の軽量化
  • リサイクルの推進

参考:環境省|中小企業版SBT・RE100取組事例|株式会篠原化学

いずれの企業も目標や取り組み内容は異なりますが、企業価値の向上、社外からの評価の向上に期待していると回答しています。

また、改めて社内全体で環境について見直すことで、新たなビジネスチャンスの創出や目標の再共有ができるなど、さまざまなプラスの効果が想定されています。

SBTを通して自社の価値を高める

SBTに取り組むことで、自社の価値を高めることはもちろん、顧客企業や投資家からの評価向上につながります。

地球環境を守るためだけではなく、副産物として多くのメリットが生まれるのです。

SBTの設定を検討している、実際に取り組んでいる企業でどこから手をつけるべきかわからない場合は、CDP認定再エネプロバイダーである「エナリス」へ気軽にお問い合わせください。

エナリスはCDP認定再エネプロバイダー。SBTの設定を検討している企業さまはお気軽にお問い合わせください。

「一体どこから手を付けたら良いかわからない…」「どうやってSBTを設定すればいいの?」など、皆様の疑問にプロとしてサポートいたします。

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