コロナ禍にも重要な「BCP(事業継続計画)」の策定手順をわかりやすく解説

2022/12/15

近年、大規模な自然災害が頻発しており、災害による事業へのダメージは無視できないリスクになっています。

また、新型コロナウイルス感染症の発生以降は、従業員が感染したり濃厚接触者となったために出勤できず、事業の継続が難しくなるケースが多数発生しました。

このようなリスクに備える手段として注目されているの「BCP(事業継続計画)」です。経済産業省「コロナ禍における事業継続に向けた取組の強化について」という通知でBCPの策定・点検・強化を要請ています。

そこで本記事では、災害や感染症の流行などの緊急時に備えた企業の対策として拡がっている「BCP」について詳しく解説します。導入を検討している企業の方は参考にしてみてください!

監修者

新島 啓司 / 環境コンサルタント

東京工業大学大学院 総合理工学研究科を修了後、約30年間、環境、再生可能エネルギー、ODAコンサルタント会社に勤務。在職中は自治体の環境施策、環境アセスメント、途上国援助業務の環境分野担当、風力や太陽光発電プロジェクトなど幅広い業務に従事。技術士環境部門(環境保全計画)、建設部門(建設環境)の資格を持つ。また、英語能力(TOEIC満点)を生かし、現在は英語講師としても活躍中。

BCPとはどんな意味?何の略?

BCPとは「Business Continuity Plan」の頭文字をとった略称で、日本語で「事業継続計画」を意味します。

事業継続計画とは、事故や災害、ウイルス流行などの緊急時に事業を継続したり、仮に継続できない状況に陥っても迅速に復旧をするための計画のことです。

お客さまやサプライチェーン企業、そして自社の経営への影響を考えると、緊急時でもそう簡単に事業を停止させることはできません。緊急時の混乱を少しでも緩和し、可能な限り被害や損失を抑えるためにあらかじめ方針や体制、手順などを定めておくことが重要です。

BCPを策定している企業の割合

内閣府が実施した「令和元年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」の結果によると令和元年度のBCP策定状況で、大企業においては68.4%が策定済み、15.0%が策定中と回答し、これらを合わせると、合計83.4%がBCPの策定に向けてすでに取り組みを開始しているという結果になりました。

同数値は、下のグラフからわかるとおり2007年の35.3%から年々増加を続けています。

内閣府「令和元年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」を元にエナリスが作成

また中堅企業では34.4%が策定済み、18.5%が策定中と回答。
中堅企業においても、合計52.9%という半数以上の企業が取り組みを開始しているという結果となりました。

内閣府「令和元年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」を元にエナリスが作成

上記の結果から、大企業を中心に中小企業においてもBCP策定の動きは、年々拡大していると言えます。

BCPが必要な3つの理由

BCPを策定すると一言で言っても、実行には手間や時間が必要です。BCPは実際に役に立つのか、現在の事業のリソースを割いてでも急いで行うべきなのか、迷いを感じる方もいるのではないでしょうか。

ここではBCPが必要とされる3つの理由と、BCP策定がよい結果につながった企業の事例をご紹介します。

 

理由1:緊急時に倒産を防げる

帝国データバンクの調査によると、新型コロナウイルス関連倒産は全国で累計4,549件が確認されているそうです(2022年11月24日16時時点)。従業員が出社できず、事業運営が滞る企業も多数発生しました。

しかし、事前にBCPを定めていたことで、スムーズに感染予防と事業継続の体制を取ることができた企業もあります。そのひとつが「サクラファインテックジャパン株式会社」です。

同社は新型インフルエンザの流行や東日本大震災をきっかけにBCPの重要性に気づき、2016年に「感染症BCP」を策定。新型コロナウイルスが問題になり始めた、2020年3月には感染症BCPに基づく対策を開始できました。具体的には、以下のとおりです。

  • 全社員がテレワーク可能な状況に
  • 出勤班/在宅班に分かれ、1週間交代で出勤と在宅勤務を交互に実施
  • 時差通勤制度を拡大
  • 2020年3月末からは、交代勤務ではなく、全社員が在宅勤務に原則変更

多くの企業が2020年4月に発令された1回目の緊急事態宣言をきっかけにテレワークに取り組み始め、多くの混乱が起こりましたが、同社は従業員を感染リスクから守りつつ、スムーズに業務を進められたとのことです。

参考:経済産業省 中小企業庁 『ミラサポPlus』事例ナビ「サクラファインテックジャパン株式会社」
   サクラファインテックジャパンのプレスリリース

 

理由2:企業の信頼性が高まる

緊急時に事業継続が不可能になってしまうと、取引先や顧客などにも影響が出てしまいます。仕方ないこととはいえ、BCP対策を行わずに取引先に損害を与えてしまった場合、信頼を失ってしまう可能性があるのです。

逆に、緊急時でも事業継続や早期復旧ができると、信頼の維持や高い評価に繋がります。

仙台市の老舗百貨店である「株式会社藤崎」は、東日本大震災で震度6弱もの地震に見舞われましたが、店内にいた約3500人の買物客を従業員が速やかに声かけや誘導をしたため、1人の負傷者も出さずに避難させることができました。

また、翌日から路上で食料や生活用品の販売を再開しました。レジが使えないなか、100円・200円等の区切りのよい価格設定をすることでお釣りが出ない工夫等をしました。

さらに、2日後の3月13日から店舗の復旧に向けた突貫工事を開始し、4月末には全面再開を実現しました。

従業員たちの迅速な対応により、株式会社藤崎の震災による損害は最小限に抑え、顧客からの信頼を得る結果となりました。

このような対応を実現できたのには、以下2つの理由があります。

  • 年2回の防火・防災訓練により従業員のパニック防止と迅速な対応を実現した
  •  1978年から東日本大震災以前までに会社や社員が経験した6つの震災被害を社内で伝承し、いざというときに備えられていた

事業継続のために、定期的な訓練や防災意識の醸成が、事業継続と顧客信頼の獲得につながった好例と言えます。

参考:中小企業庁「BCP等の取り組み事例集

 

理由3:事業が拡大する可能性もある

BCP対策は事業拡大のきっかけになるケースもあります。
緊急時でも安定した経営が可能という信頼性は企業のイメージアップに繋がり、取引先として選択されやすくなります。

東京都の製造業である「株式会社生出」では、新型インフルエンザ(2009年)をきっかけに、BCPマニュアルを整備しました。中小企業でありながら、BCMS(事業継続マネジメントシステム) の国際規格を認証取得しており、リスクに対して非常に意識が高い企業と言えます。

社内設備の危険個所をひとつひとつ点検したり機材の転倒防止措置を講じたりしたほか、被災しても代替生産できる体制も整えました。顧客企業に製品を確実に送り届ける体制が信頼され、顧客企業がリスクヘッジとして他社を含めた2社へ分散発注を検討していたところ、生出への1社選定で発注してもらうことができました。

BCP対策が顧客からの信頼につながり、経営戦略として役立った事例です。

参考:中小企業庁「BCP等の取り組み事例集

※BCMS(事業継続マネジメントシステム):BCPが有効に機能するための維持・管理の仕組みのことで、マネジメントレビューやBCPの運用改善等が含まれるとされています。国際規格としてISO 22301が定められています。

BCPの策定手順をわかりやすく解説

では実際にBCPはどのように策定すればよいのでしょうか。
中小企業庁が発行している「中小企業BCP策定運用指針」を元に、BCP策定手順を解説します。

中小企業BCP策定運用指針は、企業が投入できる時間や労力別の4コースに分けられています。

コース

策定までにかかる日数や労力

入門コース

経営者1人で1〜2時間程度

基本コース

経営者1人で1〜2日程度

中級コース

経営者1人で3〜5日程度

経営者とサブリーダー含め数人で2〜3日程度

上級コース

経営者とサブリーダー含め数人で1週間程度

引用:中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針

今回は、初めてBCPを策定する企業向けの「入門コース」を用いて説明します。
入門コースでは、経営者の考えをBCP様式類に沿って記入することで、最低限のBCP策定・運用が可能です。

準備としてBCP様式類(記入シート)のダウンロードが必要になります。
中小企業庁のダウンロードページから「WORD」か「PDF」のどちらかのファイルをダウンロードしておきましょう。

BCPチェックリストで取り組み状況をチェックする

本格的に策定に入る前に、現在の事業継続能力を把握しておきましょう。
「BCP取組状況チェックリスト」がありますので設問ごとに「はい/いいえ」で回答してください。分からない場合は、「不明」にチェックをします。

引用:中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」1-7

「はい」と回答した数によって現在のBCP取組状況が分かります。

判定結果を参考にBCPの策定・運用に取り組みましょう。

STEP.1 基本方針の立案

まずは、どんな目的でBCPを策定するのかといった基本方針を決めましょう。
基本方針の具体的な例は、次のようなものが挙げられます。

  • 人命の安全を守るため
  • 従業員の雇用を守るため
  • 供給責任を果たし、顧客からの信頼を守るため
  • 経済活動の活力を守るため

基本方針は、自社の経営方針の延長線上にあるという考え方をすると良いかもしれません。
経営者の頭の中にある基本方針を記入し、該当するものにチェックを入れましょう。

STEP.2 重要商品の検討

次に、企業で取り扱っているさまざまな商品やサービスの中でも、特に重要度の高い商品を検討します。商品やサービスに優劣をつけるのは難しいかもしれませんが、災害時は人員的にも資材的にも平常時と同じ供給はできません。

そのような状況下でも、事業を継続させるためには優先的に製造、販売する商品・サービスを決めておく必要があるのです。

迷ってしまう場合は、売上や利益に最も影響を与える商品・サービスを選択するのもよいかもしれません。重要商品が決まったらBCP様式類の「重要商品名」の欄に記入しましょう。

STEP.3 被害状況の確認

BCPの策定には、被害状況の想定が非常に重要です。緊急時の被害や影響を具体的にイメージすることで、どの対策を取り入れるのかが変わってきます。

とはいえ、これまで被災経験が無い場合、受ける被害や影響はイメージしづらいもの。
そこで、大規模地震(震度5以上)で想定される影響の例を紹介しますので参考にしてみてください。

■インフラへの影響
  ・電気・水道・ガス等のライフラインの停止
  ・電話・インターネット等の情報通信の不通
  ・道路の通行規制や渋滞
  ・鉄道の停止

■会社への影響
  ・従業員やその家族の負傷
  ・パソコン等の情報機器の損傷やデータの破損
  ・工場等における設備の破損
  ・商品・備品等の落下
  ・事業停止等による売上の減少

様式類の中には、新型インフルエンザや新型コロナウイルスなどが引き起こすパンデミックで想定される影響についても参考にできる例があります。

さまざまな緊急事態に対応できるよう、幅広くイメージしておきましょう。

STEP.4 事前対策の実施

緊急時の被害や影響のイメージができたら、事前対策を検討するフェーズに移ります。

事前対策とは、緊急時でも重要商品を提供しつづけるための経営資源(人、物、情報、金)が必要になります。経営資源を確保するために平常時から検討・実施しておくのが事前対策です。

事前対策は、日頃から把握している自社の強み・弱みを踏まえた上で検討するのが大切です。経営資源ごとの事前対策の例は次の通りになります。

引用:中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針
 

STEP.5 緊急時における体制の整備

緊急時の適切な対応を行うために、責任者と対応の内容を整理しておきましょう。

緊急事態が発生した当日における初動対応や、復旧に向けた対応など、さまざまな状況下において、会社の対応に関する意思決定や指揮命令を行う統括責任者を決定しておくべきです。

命令系統や責任者がはっきりしていれば、混乱が予想される緊急時にもスムーズな対応が可能になります。万が一、統括責任者が不在や被災してしまう事態も考慮して、代理人も決めておくと良いでしょう。

BCPの策定の手順概要は以上の通りです。
実際の策定にあたっては、中小企業庁発行の『中小企業BCP策定運用指針』に、より詳細な手順や確認すべき項目が解説されています。
ぜひご参照ください。
>経済産業省中小企業庁『中小企業BCP策定運用指針 第2版 -どんな緊急事態に遭っても企業が生き抜くための準備-』

日本企業のBCP策定事例

策定手順は理解したけれど、対策内容を決めるのに迷っているという方も多いのではないでしょうか。

そこで、BCP策定の具体例として日本企業における策定事例を紹介します。
自社の事業内容や基本方針に沿った事例を参考にして、より有用なBCP策定を目指しましょう。

この記事では2社ピックアップしましたが、さらに別の事例も知りたいという方は内閣官房のBCP事例集もあわせて確認してみてください。

感染予防対策の徹底で地域の暮らしを支える(イオン株式会社)

コロナ禍において事業継続の対策を取り、地域の暮らしを支え続ける活動をしたのが小売大手の「イオン株式会社」です。

店舗の清掃や消毒、従業員のうち濃厚接触者のPCR検査等の徹底など基本的な対応に加え、

・不足人員の補充(チーム・部署間で対応)
・店舗営業が困難な場合、近隣エリア内で人員や商品を集約し、地域での営業を継続

などの仕組みづくりを進め、地域での営業活動を継続しました。

また、店舗だけでなく、本社等の事業所においても、

・出社率30%以下に(テレワーク環境の整備)
・会議や商談を原則オンラインに
・出社勤務をチーム分けし、接触回避しつつ全員出勤できなくなる状況を防止

などの対応を取りました。

情報通信サービスの安定提供のための災害対策(KDDI)株式会社

誰もが知っている日本の大手電気通信事業者である「KDDI株式会社」では、次のような幅広いBCP対策が施されています。

  • 災害発生時の対応体制、災害対策本部の設置
  • au災害復旧支援システム
  • 保守体制の刷新(2拠点化、手運用からの自動化)

さまざまな対策を行っているKDDI株式会社ですが、特に次のような停電対策への取り組みに力を入れています。

  • 被災地エリアの通信設備に電源を供給するため、移動電源車や非常用発電機の配備を増強
  • 通信サービスを使用できるように、無線エントランス回線や移動可能基地局を増強
  • 全国の携帯電話基地局に24時間以上稼働可能なバッテリーを備蓄
  • 自家発電設備の活用

復旧や安否確認などの要になる情報通信サービスを取り扱っている企業だからこそ、BCP対策を重視していると言えるでしょう。

BCP対策を行い緊急時に備える重要性

いつ起きるか分からない緊急事態だからこそ、日頃から様々な被害を想定し、事が起こる前にBCPを策定しておくことが事業継続のために重要です。
特に、電気や水などのインフラが停止すると、事業の継続に甚大なダメージを及ぼすことがあります。

株式会社エナリスでは、災害時にもお客さまの事業リスクをすこしでも減らせるよう、「電気」の側面からBCP策定をサポートしています。
たとえば、蓄電池や太陽光発電設備の導入。エナリスの「TPO PLUS」サービスをご利用いただけば、第三者保有モデルによって初期投資ゼロで蓄電池や太陽光発電設備を活用できるようになります。

重要性の高い電気関連のBCP対策を検討している企業の方は、ぜひお気軽に「エナリス」までお問い合わせください。

太陽光発電設備、蓄電池の導入を初期投資0で実現する「TPO PLUSサービス」

太陽光発電設備・蓄電池設備の初期設置や運⽤メンテナンスは、エナリスがサービス費⽤内で対応。お客さまの電気料金やCO2排出の削減、BCP対策につなげるサービスです。

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