VPP(バーチャルパワープラント)とは?仕組みや参加方法を解説

2022/7/29

災害対策や環境への配慮から、社会全体で太陽光発電などの再生可能エネルギーや蓄電池などの導入が進んでいます。これは菅元総理が宣言した「2050年までに二酸化炭素・温室効果ガス『実質ゼロ』」へのステップで、日本や世界全体にとって重要な動きです。一方で、天候の影響を受けやすい再生可能エネルギーの増加は、エネルギーの安定供給の側面で課題も生じさせています
企業の皆さまからは、自家発電設備や蓄電池などの電源設備を導入したけれど十分活用できていないという声も多く聞かれます。

これらの課題解決に役立つ新しい仕組みが、「VPP(バーチャルパワープラント・仮想発電所)」です。VPPは、企業の皆さまがそれぞれお持ちの、バラバラに存在している電源設備を統合的に制御する仕組みです。これにより災害対策や環境配慮の目的で導入した設備を有効活用して、電力の需要と供給のバランス調整に寄与することができます。

企業にとっては、十分に有効活用できていない電源設備を収益化させる大きな機会にもなります。電源設備を持つ企業の皆さまは、ぜひこのチャンスを活用してください。

本記事では、「VPPって何?はじめて聞いた」という方でも理解できるよう、基礎的な部分をわかりやすく解説します。

監修者

新島 啓司 / 環境コンサルタント

東京工業大学大学院 総合理工学研究科を修了後、約30年間、環境、再生可能エネルギー、ODAコンサルタント会社に勤務。在職中は自治体の環境施策、環境アセスメント、途上国援助業務の環境分野担当、風力や太陽光発電プロジェクトなど幅広い業務に従事。技術士環境部門(環境保全計画)、建設部門(建設環境)の資格を持つ。また、英語能力(TOEIC満点)を生かし、現在は英語講師としても活躍中。

VPPとは?

VPPとは「バーチャルパワープラント(Virtual Power Plant)」の略で、日本語に訳すと「仮想発電所」です。

仮想発電所と言ってもピンとこないかもしれませんが、VPPを一言でいうと、小規模の電源設備をまとめて管理し、全体として発電所のような機能を得るシステムのことです。

電源設備には太陽光発電などを含む「電気をつくり出す設備」や、蓄電池など「電気を蓄える設備」などがあります。それぞれ単体の設備として見ると、生み出す電力には限界があります。しかし、それらを大量に連携させることができれば、全体として発電所のような機能をもたせることができ、大きな付加価値を生み出すことができます。

では、個別の電源設備をあたかも発電所のように機能させる“VPP”は、どのような価値を社会に提供するのでしょうか。VPPの役割をもう少し詳しく見てみましょう。

VPPの役割は需要と供給のバランスをとって、調整すること

VPPの役割を説明するためには、現在の電力供給について理解する必要があります。少し大きな話になりますが、どうかお付き合いください。

私たちはコンセントにプラグを差し込めば、必要なときに際限なく電気を使うことができます。この状況を保つため、電力会社は、電力需要を細かく予測して、需要にぴったりの量の電力を供給できるように、常に調整しています。

しかし今、世界的な脱炭素の潮流の中で、2つの課題が生まれてきています。

 

■1つ目の課題:脱炭素のためには、火力発電にこれ以上頼るのは難しい

2011年3月11日の東日本大震災以降、日本国内の多くの原子力発電所は稼働停止となり、廃炉が決定されています。その分の不足した電力は、火力発電で補っていました。

その結果、2013年度には過去最高の温室効果ガス排出量を記録。環境問題に配慮するなら、これ以上火力発電に頼るのは難しい状況になっています。

 

■2つ目の課題:再生可能エネルギーは発電量が不安定

火力発電や原子力発電に代わって注目されているのが「再生可能エネルギー」です。

再生可能エネルギーとは、太陽光や風力などの発電時に温室効果ガスが発生しないクリーンなエネルギーのこと。地球温暖化を促進しない電源として期待されていますが、太陽光や風力など一部は天候などの条件によって発電量が変動しやすいというデメリットもあります。

火力発電や原子力発電のように、必ずしも常時安定した発電ができるわけではない再生可能エネルギー電源の増加により、電力の安定性が取りにくくなっているという問題が生じています。

 

日本が脱炭素化を進めるためには、これまで電力供給の調整役を担ってきた火力発電への依存度を下げ、再生可能エネルギーの主力電源化を推進する必要がありますが、一方で電力の安定性を保つのは今までよりも難しくなります。

この課題を解決するためには、再生可能エネルギーの不安定さを補い、需要と供給をバランスする仕組みが必要です。それに貢献するのがVPPです。

VPPの重要なポイントは「電力需要に合わせて供給側が一方的に増減させるのではなく、需要側のリソースも用いて、需要と供給を両方調整しよう」という考え方です。電気が足りなくなりそうなら需要を減らし、逆に余りそうなら需要を増やすなどの対応を即座に行う「調整力」がVPPの要です。

それでは、VPPがどうやって電力の需要と供給を調整しているのか、詳しい仕組みを説明します。

VPPが電力の需要と供給を調整する仕組みとは

VPPは大きく分けて3つの役割が連携することで成り立っています。まずはその役割から説明します。

VPPには電力ユーザー・リソースアグリゲーター・アグリゲーションコーディネーターが必要

  1. 電力ユーザー(需要家):工場や一般家庭など、電力を使用するユーザー
    電力ユーザーが持つ太陽光発電設備や蓄電池、電気自動車(EV)などの電源となる設備(「分散型電源・DER」と呼びます)を活用することが、VPPによる電力の需要と供給調整の根幹です。
  2. リソースアグリゲーター:電力ユーザーの分散型電源をまとめあげ、制御する事業者
    電力ユーザーの分散型電源を集め、コントロールする司令塔のような役割を担う事業者です。
  3. アグリゲーションコーディネーター:リソースアグリゲーターに集まった電力をさらに束ねて、電気事業者と取引を行う事業者

図に表すと以下のようになります。

引用:経済産業省・資源エネルギー庁HP「VPP・DRとは」より

続いて、この3つの立場がどのように連携して電力の需要と供給を調整するのか、説明します。

電力の需要と供給を調整するデマンドレスポンス

VPPにおいて調整力を提供する1つの手法が「デマンドレスポンス(DR)」です。デマンドレスポンスは、需要抑制のパターンによって大きく2種類に分けられます。

  • 下げDR=電力不足の恐れがある場合に、系統からの電力消費を制限する
  • 上げDR=電力の需要より供給が多い場合、系統からの電力消費を増やす

デマンドレスポンスについて詳しくは下記の記事をご覧いただければと思いますが、簡単な例を挙げて説明します。

>デマンドレスポンスに参加するメリットとは?基礎知識や実施までの流れ、注意点を分かりやすく解説します

 

■真夏の日中など、電力の需要が増加し、電力不足が危ぶまれる場合

この状況では「下げDR」が要請されます。

  1. 電力事業者からアグリゲーションコーディネーターに電力の需要と供給のコントロールを要請
  2. アグリゲーションコーディネーターから連絡を受けたリソースアグリゲーターが、電力ユーザーに「下げDR」を要請
  3. 要請を受けた電力ユーザーは、蓄電池から放電したり、工場の生産ラインの稼働時間をずらしたり、自家発電を使用して消費電力をまかなったりすることで、発電所から供給される電力の消費を削減。
  4. 需要が下がり、電力不足を回避できる

 

■晴天が続き太陽光発電による発電量が大幅に増加するなど、需要に対して供給過多になっている場合

この状況では「上げDR」が要請されます。

  1. 電力事業者からアグリゲーションコーディネーターに電力の需要と供給のコントロールを要請
  2. アグリゲーションコーディネーターから連絡を受けたリソースアグリゲーターが電力ユーザーに「上げDR」を要請
  3. 要請を受けた電力ユーザーは、蓄電池へ充電することで系統から供給される電力の消費を増加
  4. 余剰となりそうな電力を貯めておき、将来の電力不足に備えられる。再生可能エネルギーの出力抑制の回避にもつながる。

 

電力ユーザーは、リソースアグリゲーターからの下げDR(節電要請)に応えることで報酬を得ることができます。

電力の安定供給に貢献できるだけでなく、電力ユーザー側のメリットも大きいため、相互にインセンティブが働き、調整力を発揮しやすい仕組みとなっているのです。

電源設備を持つ企業がVPPに参加するには

このように電力ユーザーにとってVPPは非常にメリットのある仕組みです。それでは、VPPに参加するには、どうすればよいのでしょうか。いくつかのポイントがあるので見てみましょう。

分散型電源があれば、VPPに参加できる可能性がある

蓄電池、電気自動車、発電機、太陽光発電をはじめとした再エネ電源、一定規模の工場生産ライン等、何らかの分散型電源をお持ちであれば、VPPに参加できる可能性は十分にあります。

ただし、どのようなメニューに参加するかによって、参加要件は細かく異なります。上記のような分散型電源をお持ちの場合、まずは信頼できるアグリゲーターに相談してみるのが最初の一歩となります。

また、国や自治体からの補助金に適応できるケースもあるため、条件が合う場合は活用してみるのも良いかもしれません。

信頼できるリソースアグリゲーターと契約すること

リソースアグリゲーターのおもな役割は、電力ユーザーに直接、調整力の提供を要請することです。また、リソースアグリゲーターは電力ユーザーとVPPサービスを契約し、分散型電源を直接制御するケースもあります。

電力ユーザーと直接契約を結ぶリソースアグリゲーターは、比較的ユーザーに近い立場です。リソースを発掘する力、需要と供給を管理する力(需給管理能力)、入札の実績や運用経験などを踏まえて、信頼できるリソースアグリゲーターと契約することが重要です。

エナリスは、VPPに関する多くの実証実験をリードした経験を持っています。また、特定卸供給事業者 として経済産業省より認定も受けており、リソースアグリゲーター・アグリゲーションコーディネーターどちらのノウハウも豊富に有しています。VPPに取り組みたい企業の皆さまはぜひエナリスにお問い合わせください。

※特定卸供給事業者とは、特定卸供給(アグリゲーション)を行う事業者のうち、経済産業省が定める要件に該当する者。経済産業省が定める要件:分散電源などを保有する事業者や、電気の供給能力を有する他の事業者(発電事業者&FIT電源除く)から1MWを超えて集約した電源を、小売電気事業、一般送配電事業、配電事業、特定送配電事業に供給すること。
エナリスは特定卸供給事業者として申請を行い、第一号に認定された(参照:経済産業省「特定卸供給事業者一覧」
◎詳しくはこちらをご覧ください>エナリスリリース「特定卸供給事業制度に沿ったアグリゲーションビジネスを開始」

分散型電源を持っていて、電力ユーザーとしてVPPに参与したい企業さまはこちら

リソースアグリゲーターとしてVPPに参与したい企業さまはこちら

電源設備をお持ちの企業はぜひVPPをご検討ください

VPPは上記のような調整力の提供によって、「火力発電の燃料費やCO2排出の抑制」「再生可能エネルギーの拡大に寄与」といった社会全体のメリットが生みだすことができる仕組みです。

また、そのような社会貢献的な視点だけでなく、調整力の提供により収益を出すことも可能です。

社会貢献と収益化、両方の観点で関心を持った企業の皆さまは、ぜひVPPへの参与をご検討ください。

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